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  • 執筆者の写真Yuji Tanaka(たなちゅ〜)

実況・解説の立場から見た第27回全学新人戦


 金沢大 OB の田中と申します.スポーツチャンバラの界隈では「たなちゅ〜」と呼ばれております.



 学生大会では主に試合の実況・解説を担当しており,微力ながらも学生の皆様のチャンバラ技術の向上に協力させていただいてます(例:2020 年の全日本学生大会では試合の解説を担当しました https://www.univas.jp/article/28571/ ).


 本稿は,21/05/15(土)及び21/05/16(日)高知県くろしおアリーナで開催された第 27 回全日本学生大会の新人戦について,実況・解説の立場から気になった点を深掘りするものです.

 今回は,リモートで解説していただいた「ガチ岡」さんこと國學院大 OB の藤岡秋介さんがコメントしていた事項を軸に深掘りしていきます.


新人が今後強くなるかどうかは,先輩に教える技量があるかどうかにかかっている.

 新人の成長は,少なからず先輩の動作・技術に影響を受けます.

 本大会では ,COVID-19 の影響で,新人選手が、他地域との交流練習をすることが困難だったこと,新人戦の開催が例年と比較して半年以上遅いことから,例年よりも,自大学の先輩の影響をより強く受けていた印象を受けます.

 例を挙げるのであれば,女子小太刀の部を制した山下選手(北海道大)の足打ちは,同じ北海道の落合早輝選手(北星学園大)の足打ちを彷彿とさせます.



 また,男子の小太刀・楯小太刀の部を制した平野歩夢選手の小手打ちは,彼の練習相手の1人である伊藤和規選手(文京SC)の小手打ちの動作と類似しています.



 なりたい/なりたくないに関わらず,新人選手は,身近な先輩の行動・アドバイス・戦術の影響を受けてしまうものです.


 したがって,本大会の結果は,各新人選手の先輩の強さを反映したものであると言えます.  

 そして藤岡さんのコメントのとおり,今後新人選手が活躍するかどうかは、その先輩に技術・教える技量があるかにかかっていると言えます.

 以上を踏まえて,今回新人選手が勝てなかった場合,本人だけではなくその先輩たちも研鑽する必要があるのではないでしょうか.


 以下,僭越ながら新人(後輩)の立場,及び先輩(上級生)の立場の方々へ,それぞれアドバイスさせていただきます.ご参考いただければ幸いです.


新人(後輩)の立場の方々へ

 強い先輩が身近にいる場合はラッキーです.

 一緒に練習してもらったり,先輩に質問したりして,色々教えてもらいましょう.

 ただし、なにか技術を教えてもらう際は、その技術を使用する意図(なんのためにその技を使うのか)を確認してください. 

 使用する意図(これはその技術の本質に直結します)を理解すれば自分なりに応用することが可能です.

 しかし表面的に,動き等を真似しただけでは,本物の技術の劣化コピーにしかなりません.

 また,強い選手の動画を見て,良い部分を真似しましょう.

 真似をした際に,自分の動きとの間で「違和感」を覚えることがあると思います.

 その「違和感」を元にその技術の本質が何であるか仮説を立てて,練習の際に仮説を検証しましょう.

 仮説が外れていたとしても,その検証で感じた新たな「違和感」は技術向上に役立つはずです.


 上記について,私の得意技である足打ちを例に説明しようと思います.

 足打ちを打つ際,始めは重心を低くするようにアドバイスを受けることが多いと思います.これは,攻撃のリーチを伸ばしたり,相手のカウンターをかわしながら攻撃したりする上で有効です.

 一方,相手の様子を見たいときは,私はあえて重心を高くしたまま足打ちを打つことが多いです.これは,重心の高さを保っておくことで,足打ちを打った後の移動がスムーズになるという効果があります.

 そのため,足打ちに反応して空振りした相手を追いかけたり,突っ込んできた相手から逃げたりすることが容易になります.

 重心を低くした足打ちしか知らない状態で,重心を高くしたまま足打ちを打つと,打った後隙が小さいという「違和感」を感じることになると思います.これを感じることができれば,技術及び戦術の幅が広がるでしょう.


先輩の立場の方々へ

 上級生という立場に満足することなく,絶えず技術を磨き続けましょう.

 本当の意味で後輩に伝えられる技術は,自分で仮説を立てて検証し,試行錯誤しながら身につけたものだけです.

 どれほど口達者であろうが,技術そのものが二番煎じ(誰かの劣化コピー)では,アドバイスに説得力は生じません.自分自身が苦労してその技を身につける過程を経ることなくして説得力をもつことはありません.

 その意味では,「強い選手の動画を見て良い部分を真似する」という行程は,上級生になっても何度も繰り返して行う必要があります.


 また,後輩にうまくアドバイスするためには,自らの技術を言語化する習慣をつけておく必要があります.

 どんなすばらしい技術であっても言葉にしなければ伝わりません(たとえば,優秀な振付師の方は,ダンスの動作であっても,言葉を尽くして動作を言語化します)

※参考動画


 なお,実況・解説の際は試合の内容について言語化する必要性がありますが,私は以下の点を注意しながら言語化しております.ご参考まで.


  • 起こっている出来事を正確に説明する(5W1H-誰がいつなぜどこでどのようにどうした):「山田選手は,残り2秒で,コートの左端から,相手の田中選手が重心を変えたことを確認した後,1 歩踏み込んで扇打ちを当てた」くらいの解像度で,試合場で起きていることを説明できるよう心がけています.正確に説明できれば,カメラ越しに視聴している人でも試合を正確に把握してもらった上で試合を楽しんでもらえます.

  • 起こっている出来事から,状況の有利・不利を考察する:いまの状況が一方の選手にとって有利なのか不利なのかを伝えます.これについては,その選手の動作の仕組みから考えてどうなのか,傾向から考えてどうなのか,という2つの視点があります.前者の視点で考察する場合は,技術を試行錯誤しながら身につけた過程で得た「違和感」が役に立ちます.後者の視点で考察する場合は、強い選手の動画を数多く見て発見した法則が役に立ちます.


以上,第 27 回全日本学生大会(新人戦)で活躍した選手(及びその先輩)も,活躍しなかった選手(及びその先輩)も,絶えず研鑽を続けて強くなり,これから楽しいスポチャンライフを送ってくれることを祈念しております.


p.s.

後日第 26 回春季関東学生大会(21/06/12 開催)についても振り返りのブログを執筆する予定ですのでよろしくお願いいたします.

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